もるだーPの日々徒然なるままに。

ニコマスでほそぼそと動画を作っている底辺Pのブログ。

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Happy Day

2010-04-01
SS
「むぅ……」

 思わず口から不満げな音が漏れた。
 そのあまりの潰れた声に、反射的に体を起こして周囲を見回した。
 どうやら事務所にいるのはピヨちゃんだけで、奥にある休憩スペースの声は聞かれていなかったみたいだ。
 今度はさっきとは別の意味で聞かれたくないため息が毀れた。
 そしてため息と同じ重さを持ったあたしの視線は、原因であるカレンダーの日付を見つめた。

 5月22日――。

 あたし……双海亜美と双子の双海真美の誕生日だ。

「うがー! いい案が浮かばないよー!」

 思わず頭を抱えてもがく。
 
「何やってるの?」

 と、そこに背後から声がかかった。
 心臓が目から飛び出そうになるのを抑えて振り返ると、そこには同じ765プロ所属のはるるん――天海春香ねー
ちゃんが荷物を降ろしながら不思議そうな顔をしていた。

「あ、はるるんおかえりー」

「うん。ただいま。それでどうしたの?」

 どうしよう?
 相談してみようかな?
 悩む……。
 悩む……。
 悩む……。
 悩んだ結果、十秒で相談する事にした。
 だってあたしにしては珍しく、もうかれこれ一時間はたっぷり悩んだんだ。誰かに相談でもしないとやってら
れないじゃない。

「あのねはるるん……」

「ん?」

「真美にね、プレゼントあげたいんだけど何がいいかな?」

「プレゼント? あ、そうか。今日は二人の誕生日だっけ?」

 はるるんがあたしの持ってたカレンダーを覗き込んで、失敗したな~って顔をした。

「はるるん酷いよー。あたし達の誕生日忘れちゃうなんてさー」

「ごめんごめん。明日必ずケーキ焼いて持ってくるから許して?」

「本当ー? それじゃ苺のいっぱい乗ったショートケーキね」

「うう……今の時期苺高いのに……。でもまぁしょうがないか。わかったよ」

 何となくノリで言ってみたけど、はるるんは最近急に人気が出てきて寝る間も惜しんで仕事してるのは知って
るから、忘れちゃっても仕方ない。
 だから明日忘れてきても怒らないからね?
 ……ちょっとは意地悪するけどね!

「それで誕生日プレゼントだっけ? 真美にあげるの?」

「うん。今日は仕事で真美が外出てるけど、いつもそれは亜美の役でさ」

「うん」

「だから誕生日は真美を主役にしてあげたいなって思ったんだ」

「そっかー」

 はるるんは頷きながらあたしの正面の椅子に腰を下ろした。

「何がいいかなー? はるるんなら何がいいと思うー?」

「うーん……。気持ちが篭ってるなら何でもいいと思うんだけど……」

「そんなありきたりじゃつまらないジャンー!」

「そ、そっか」

 はるるんはあたしの迫力に負けたのか、ちょっと体を引いて謝った。
 でも言ってることはわかるんだ。
 真美だったら何をあげても怒らない。
 ありがとって言って受けてくれると思う(但しネタ以外なら。そんな事考えてたらネタな何かをあげたくなっ
た)。
 でも今年は普通じゃ駄目だ。
 いつもあたしの代わりに『双海亜美』で仕事してくれる真美は、何も言わないで頑張ってくれてる。そんな真
美に今年は特別な何かをあげるって決めたからには、それはもう目が喉から飛び出るくらいのものをあげたいじ
ゃない。

「うわー。何かいいアイデアないかなー」

 そんな私を見て、はるるんも一緒に考えてくれるようだった。キョロキョロと周囲を見渡し、ふとその視線が
一箇所で止まった。

「小鳥さん小鳥さん」

「何~?」

「あそこのお花ってバラですか?」

 はるるんの言葉に私も目を向けると、そこには小さく花開いたバラが花瓶に生けられてた。

「そうよ。さっきあずささんが買ってきたのよ。綺麗で
しょ」

 お花かぁ……。
 でもお花は綺麗だけどすぐに無くなっちゃうからなぁ。
 そう思ってため息をついた時、はるるんが急に手を叩いた。

「真美って何時頃戻るの?」

「今日? え~っと、確か七時だから後三時間くらいか
な?」

「それならさ……」

 はるるんが耳元で囁いてくれたアイデアに、あたしは
満面の笑みを浮かべて頷いた



♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



 午後九時。
 真美は未だ帰らず。

「真美ちゃん遅いわね……。はい、春香ちゃん」

「ありがとうございます、小鳥さん」

 あたしに付き合って残ってくれたはるるんと普通に真美を待っていたあたしに、残業で残ってたピヨちゃんが
冷たいココアを淹れてくれた。

「遅すぎる! にーちゃんも連絡一つ寄越さずに真美を連れ回すなんて何考えてるんだー!」

「まぁまぁ亜美ちゃん落ち着いて。収録が長引いてるだけかもしれないじゃない」

「それにしたって電話一本入れないなんてショクムタイマンだー!」

 こんな大事な日に真美がいない。
 別ににーちゃんが悪い訳じゃないってわかってる。わかってるけど、何もこうして待ち侘びている時じゃなく
てもいいじゃないか!
 はるるんとピヨちゃんが心配そうにあたしを見てるけど、今のあたしの憤りは収まりそうもない。

「何か、このままだとプロデューサーさんに消えない歯形がついちゃいそうな気がするわね」

「こ、小鳥さん、今の状況でそれは笑えません……」

 そんなやり取りを目の前でされて、にーちゃんへのお仕置き方法を噛み付きと決定する。
 と、その時、事務所の外から階段を上がってくる足音が聞こえた。

「あら? 戻ってきたかしらね」

「ほら、亜美。そんな顔してないで。真美にプレゼントあげるんでしょ?」

「ガルルルルル……」

 ……仕方ない。
 にーちゃんへのお仕置きは真美にプレゼントを渡してからにしよう。
 そう思い直して、怒りを強引に隅っこに追いやると、綺麗にラッピングされたプレゼントを後ろ手に持ってド
アの前に立つ。
 だんだんと足音が近づくと同時に、あたしの心臓の音もだんだんと大きくなっていく。
 う~緊張する~!
 心臓おとなしくしろー! バクバクバクバクうるさいぞー!
 思わず胸を何度か叩いて、後ろにいる二人に音が聞こえないように努力する。
 そんなタイミングでドアノブが回った。

 ドクン――。

「たっだいまぁー! 疲れたー! ピヨちゃん、何か飲み物ー!」

「ふぃ~。疲れたー」

「ま、真美!」

「およ? 亜美? 待っててくれたんだ?」

「と、当然じゃん! そ、それよりさ……」

 ドクンドクン。

 あ、あれ?
 何でこんなに口が動かないんだろ?
 さっきココア飲んだのに乾いちゃってるし、急に手が震えてきた。や、手だけじゃなくて足もだ。心臓の音も
さっきよりも煩くなっちゃった。

「どしたの?」

 真美が不思議そうに顔を覗き込んでくる。
 瞬間、ぼっと顔が熱くなった。
 プレゼントをいつもと同じ感じで渡すだけなんだぞ?
 何でこんなに緊張しちゃうんだー!

「亜美」

 不意に――。
 不意に肩に優しく手が置かれた。
 びっくりして振り向くと、はるるんが笑ってくれてた。

「大丈夫。ゆっくり深呼吸して。そうしたらほら、
ね?」

 反対の肩にも手が置かれて見ると、ピヨちゃんもはるるんと同じ笑顔で頷いてくれた。
 ……うん。
 ……うん!

「ありがとう! はるるん! ピヨちゃん!」

 大きく深呼吸。
 目を瞑って、胸いっぱいに空気を吸い込んでから――。

「あ、亜美、実は渡したいものあるのだー」

 私の決意は真美のKYによって一瞬で掻き飛んだ。
 後ろではるるんとピヨちゃんがコケたのがわかるくらい、このKYは酷い。
 
「まぁ~みぃ~?」

「何?」

 わかってない……。
 全っっ然わかってない!
 あたしが今どれだけの決意を持ってプレゼントを渡そうとしたのかわかってるのかー!
 地獄の底から呼びかけるあたしの声にも、のほほんとした顔でにーちゃんに何かを頼んでる。
 さすがに気の長いあたしでも、ちょーっとむかーって来たぞ?

「あのね。真美!」

 そう声を荒げちゃった途端、不意に鼻の前に甘くて良い匂いが広がった。

「亜美、いつもありがと! これお誕生日プレゼン
ト!」

 そこにあったのは……。

「オレンジ色のバラのリース……?」

「今日あたし達の誕生日でしょ? それで今年はアイドルになって二人で頑張ってきたし、特別なプレゼントあ
げたいなって思って、にーちゃんに相談したんだ。そしたら、バラが今月の誕生花だから、ドライフラワーの
リースなんてどうだって言ってくれて」

 驚きながら、それでも眼だけ動かしてにーちゃんを見
る。
 ちょっと照れ臭そうにしながら、軽く頷いてくれた。

「これ作ってたら遅くなっちゃったんだけど……許してくれるかな?」

「そうなんですか?」

「はい。仕事は予定通りで終わったんですけど、これ作るのに時間かかっちゃって」

 ピヨちゃんとにーちゃんが話してるけど、今はそれよりも……。

「けっこー上手にできたと思うんだけど、初めて作ったからボロボロだけど……だめかな?」

 そんな訳ないじゃない!
 そう言いたいけど、こんな事されて嬉しいのと、先を越されて悔しいのと色々な気持ちがぐちゃぐちゃになっ
て、多分あたしは変な顔してる。
 
「あーみっ」

「はるるん……」

「先越されちゃったけど、ほら。ね?」

 可愛くウインクしたはるるんに、あたしは大きく頷いた。そして気持ちを落ち着けるのに深呼吸三回。
 うん。
 落ち着いた。
 先を越されちゃったけど、あたしの感謝の気持ちはかわらないんだ――!

「真美、お誕生日オメデトー!」

 あたしは、白いバラのドライフラワーで作ったリースを真美に差し出した――。


                                                   END

<after>
「小鳥さん、本当にありがとうございました」

「いえいえ。私は何もしてませんよ」

「何の話ですか?」

 笑顔で互いのリースを愛しげに眺めている双子を見つめていると、春香の隣から小鳥とプロデューサーの会話
が聞こえた。

「いや、俺も真美からプレゼントの相談を持ちかけられて困ってたんだよ。そしたらさ、小鳥さんがメールくれ
たんだ。今亜美ちゃんはドライフラワー作ってますよって」

「私は事務所の日常会話を暇潰しにメールしただけです♪」

 そんな大人二人の会話に、春香は一瞬ほけっとしてから、ため息をついた。

「かなわないなぁ。この二人には」

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