もるだーPの日々徒然なるままに。

ニコマスでほそぼそと動画を作っている底辺Pのブログ。

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また書いてみました

2010-05-27
SS
こん○○わ。なんだかんだで本日一つ年をとってしまったもるだーPです。

また5みゅますIRCチャンネルで、少人数ながらも1時間でかきますたー大会(主催者不在)が発生。
動画作成が進んでない中、セコセコ書いてみました。

今回は伊織です。
制作時間はJUST1時間。
一緒に書いた周りがよすぎて、完全に埋没した感がビシバシありますが、よければ感想お待ちしております。


伊織SS→鳴らない電話
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まだまだ続いている一時間で書きますたー大会

2010-05-24
SS
こん○○わ。もるだーPです。

先日のSS大会以来、どうも主催者が面白がって毎日大会が開催されている訳ですが。

いや書くのは好きなんでOKなんですが、睡眠時間が削られるのは勘弁してほしいw

そんな訳で、二作目と三作目を書いたのでまた載せたいと思います。
それぞれ書いたときより若干の修正を加えてますが、大した変更ではないです。
制作時間は格1時間~1時間半(修正時間込み)
大した出来ではないですがよければご覧ください。

春香SS→嫌いな雨

千早SS→自由(グロ注意)

鳴らない電話

2010-04-01
SS
 電話がかかってくる。
 かかってこない。
 かかってくる。
 かかってこない……。
 そんな事をぼんやり思いながら彼是二時間が過ぎた。
 あ、二時間っていうのは私がTV収録に入った時間がちょうど電話を待ち始めた時間と一緒だったからで、ずっ
と待っててそわそわしていたとか、そういうことじゃ決してない。
 ……ないんだからね?
 それでも、『今日電話するよ』って珍しくアイツから言ってきたんだったら責任を持って電話してくればいい
のに、メール一本寄越さないで待たせるなんてどうにかしてるってもんだわ。
 大体自覚が足りないのよね。
 このトップアイドルの伊織様に電話するなら、前もってしっかりとしたアポイントメントをとって、もし遅れ
るなら遅れるでメールなりなんなりで連絡を入れればいいのに、事務所を出る時に一声かけただけでその後何の
音沙汰もないなんて非常識にもほどがあるってものよ。

「水瀬さん、次行きますー! 準備してくださいー!」

「はーい!」

 休憩時間が終わっちゃった。
 結局電話はなし、か。
 そりゃ私の担当プロデューサーじゃないし、元担当プロデューサーと恋人関係にあるなんて、表立って言える
話しじゃないけど、自分から『電話する』って言ったのなら、言葉の責任ってものを取るべきじゃない? それ
なのにあの変態ったら、一向に連絡を寄越さないんだから!
 あ~何かしら?
 ムカムカしてきちゃったじゃない。
 これも全てあいつのせいよね。
 ちらりと目の端に私の担当プロデューサーが映った。
 プロデューサーは、大きく溜息をつくと私に堪えるようヘンテコなブロックサインを送ってきた。
 わかってるわよ!
 本番なんだからこのムカムカを表に出すなんてヘマはしないわよ! 特にこんなクイズ番組のゲストなんて番
組じゃね!
 さてと……。
 この悪くなった気分、全てぶつけてやるんだから!


☆    ☆    ☆    ☆    ☆   ☆


「お疲れ様でしたー! 以上で番組収録は終了ですー!」

 周囲から一斉に労いの言葉があがった。
 私は大きく息をついた。
 機材トラブルの発生から圧してしまった収録は、結局三時間遅れで終了した。
 その間にあった何度かの休憩に、携帯電話を確認したけどまるであいつからの履歴は残ってなかった。
 なんだかなー。
 あれだけムカムカ来ていた感情も、さすがにここまでは持続しなかったみたいで、気がついたら疲労が一番の
問題に差し替えられていた。
 あいつ……こんなに無責任な奴じゃない筈なのにな……。
 もちろん互いに忙しい身。
 上手く連絡が取れないなんてことは山のようにあった。
 それでも必ずあいつは連絡をくれたって言う証拠が残っていたし、私も必ず残した。
 だってそうしなかったら、いつ私から離れて行っちゃうかわからないじゃない。
 自分でも自覚しているけど、私は意地っ張りだ。
 ついでに我侭で何をしても周囲を振り回している自覚はある。だけどこれが私だから自分から性格だけじゃな
くて、全てを変えようなんて思ったこともなかった。
 だけど……今は違う。あいつがいなくなるのがこんなに怖い。
 あいつが私を見てないと寂しいし、あいつが笑わないと悲しいし、あいつが傍にいないと胸が苦しくなる。
 プロデューサーに着替えると告げ、控え室に戻る。
 力なく椅子に腰を下ろすと、もうそれだけで何もする気がなくなった。
 するとそれだけで疲労した体が、心までジクジクと黒く侵食してくのを感じてしまった。
 悪い考えばかりが頭に浮かんでは消えていく。
 そんなことあるはずないじゃない! そう強がっても心のどこかで思っていた『でも……』という感覚が消え
てくれない。
 私、フラれたのかな……。
 力なくドレッサーに体を預け、うつ伏せになる。
 うん。フラれたっていうのが一番当てはまる推測かもしれない。
 そうだ。
 珍しく電話するなんて言ったのだって、別れ話を切り出すためだったんじゃないかしら?
 ああ、なんだ。そういうことなんだ。

「それなら……期待持たせるようなこというんじゃないわよ……。バカ……」

 涙が零れたその時、誰かがドアをノックした。

「まだ着替え中なんで、後にしてもらえませんか?」

 正直、今は誰にも会いたくない。
 だけどノックの主はもう一回ノックしてきた。

「だから、着替え中だって言ったじゃない! もうちょっと待てないの!?」

 普段はお嬢様として通しているから、これがプロデューサー以外に人に聞かれたら大問題なんだけど、傷心
の時くらいしょうがないじゃない。
 でもノックの主はこっちの事などお構いなしに、三度目のノックをしてきた。
 さすがの私も消えてしまっていた怒りが再燃した。もちろん燃料は失恋だ。爆発力はハンパじゃない。
 椅子を倒してドアに駆け寄ると、怒りをぶちまけながら開いた。

「だから! 今着替えしてるって言ってるのになんだっていうのよ! これ以上しつこいなら、警察にでもス
トーカーが制作スタッフの中にいるって訴えてやりましょう……か?」

 怒号が一瞬で萎んだ。
 最後の方なんて自分でさえ発音したかわからない。
 でも、ドアの向こうにいた人を見て、私は言葉を失った。

「それは勘弁してほしいなぁ」

 そこには、ずっと電話を待っていたアイツがいた。

「え? え? なんで?」

「ん? ああ、実は出先で携帯壊しちゃってさ。伊織の電話番号わかんなくなっちゃったんだよ」

 愛想笑いでごまかしながら、人の良さそうなアイツは頭を掻いた。

「……私の電話番号、覚えてないんだ?」

「……ごめん」

「……だから電話くれなかったんだ?」

「事務所に戻れば電話番号くらいすぐわかったんだろうけど、ちょっと雪歩が穴掘っちゃってさ。戻る時間なく
なっちゃったんだ」

「……時間がなくなった?」

「うん。メールでも良かったけど、電話で喜ぶ伊織の反応を見て、それからつれていきたいって思ってたからさ。
ついメールとかも忘れちゃって」

「バカ!」

 それ以上何も言えなかった。
 何が私はフラれたよ? 全然コイツはそんなこと考えてなかったじゃない! 私を喜ばせたいからってだけし
か思ってなかった!
 目の前にいるコイツに抱きつく。
 そうしないと嬉し涙が隠せないから。
 最初は戸惑ってたけど、途中から私の髪を梳きながら頭を撫でてくれた。その感触がまた優しくて、涙が溢れ
て来た。

「っと、本当に時間ないや。伊織、そのままでいいから行くぞ」

「え? って何処に行くのよ? それにプロデューサーに一言言っていかないと……」

「大丈夫。ここから先は俺が引き受けるって言っておいたから」

 なんて手回しのいい事。

「で、でも、こんな格好でどこに行くのよ!」

 着ているのは普段着じゃなくて、アイドルとしての仕事着だ。フリルが沢山ついている、絶対に普段人前に来
て歩けないタイプの服。

「だから時間ないって言っただろ?」

 アイツは私の手を引きながら廊下を歩き出すと、今度こそ愛想じゃない、心からの満面の笑みを浮かべた。

「これから親父達と食事なんだから」

 ――もちろん、その瞬間私の顔は真っ赤に染まったのは言うまでもない。
             
                                                END

自由

2010-04-01
SS
 少女は逃げていた。
 暗い地下道を真っ直ぐ地上に向けて走っている。
 折角逃げ出せたのだから、足を止めて追手が来るのをおとなしく待つなど、そんな愚かな選択肢など最初から
持ち合わせていないのだろう。
 と、言うよりもそんな事を考えるのなら最初から逃げ出さない筈だ。
 視界に光のない地下道は少女の方向感覚や距離感を奪い去り、少し走っては足元を走る何かのチューブに
引っかかって転び、または曲がり角が見えず、全速力で衝突してしまうのもすでに二桁は超えている。
 こういう時、せめて手が自由に動けばと思う。
 だが手は手錠に似た見た事のない手枷のせいで、完全に自由を奪われている。救いは後ろ手ではなく前で
動けなくなっている事か。

「あぐっ!」

 少女は何度目かの衝突に、激しく後ろに吹き飛んだ。
 今の当たり方はまずい……。
 心の中で呟くと同時に、少女は埃っぽい床の上をのた打ち回り始めた。
 もしかしたら折れてしまったかもしれない。
 そんな想像をさせる痛がり方は、ひいていく事を知らず段々と範囲を広げて少女の体を蝕んでいっているのだ
ろう。
 それは今の衝突だけではない。これまで何度となく体を痛めてしまった膿が噴出している筈だから。
 痛みのせいで呼吸ができていない。
 口をだらしなくあけ、必死にもがく様に酸素を欲する。あまりの苦しさに口端からは唾液が流れ、涙がもう前に
整えたのが何時だったかわからない、潤いなどとっくに消え去った髪に染み込まれていく。
 酸素を取り入れる穴を増やそうと、鼻で呼吸を行う。
 しかし、こちらも痛みのせいか涙のせいかわからないが、鼻水によって塞がれていた。

「が……ぐふ……ゲホゲホ……!」

 もがく。
 床の上で右往左往し、仰向けうつ伏せ右向き左向きと体を動かして、必死に痛みを忘れ、酸素を求める。
 どれだけの間もがき苦しんでいたのか……。
 ようやく落ち着いた少女は、仰向けの体勢から立ち上がった。
 それだけの行為なのに、腰を半分浮かしては転び、よつんばの姿勢から立ち上がろうとすると前のめりに突っ
伏す。
 時折衝突の際にぶつけた肩を再び痛めて、悶絶していた。
 なんて事なのか。
 かつてアイドルとして世間に素晴らしい歌声を届けていた人物と、今暗い地下道で汚らしくも自由を求めてい
るこの少女が同一人物なんて誰が想像できようか。
 少女はようやく立ち上がると、後ろを気にしながら壁に手を当てて歩み始めた。
 どうやら追手を気にして速度を上げるのではなく、体が痛まない方法を選択したらしい。
 ……ああ、いや、走りたくても走れないのか。
 それまでちゃんと床を踏みしめていた左足を引き摺っている。捻挫でもしたのだろう。
 どうせならもう諦めればいいと思う。そうしたら手厚い看護が待っているのだから。
 もちろん、傷が治った後に待ち構えているのは、陵辱と肉体的な制裁だが。
 それは少女も理解しているからこそ、痛みを押してでも逃げ出そうとする。自由を求めて地上を目指す。
 と、その時少女の顔に希望の兆しが見えた。
 見ると彼女の視線の先には、光が零れているドアが燦然と輝いていた。

 コングラッチレーション。

 心からの賞賛を送ろう。
 そこに辿り付いた人間はいない。
 大抵は壁の衝突の際に致命傷を負ってそのまま死んでいくか、もしくは暗闇の中で方向感覚を失い餓死してい
くからだ。
 そういう点では彼女の体は通常より頑丈だったと言う事か。それなら素直に献体に回せば良かった。その方が
立派に人の役に立つ。
 少女は、もう希望によって痛みを忘れたのだろう。
 小汚い姿であっても輝くという形容詞が見事に当てはまる笑顔を浮かべて、ドアへと歩いていく。
 足取りが軽い。
 それはしょうがない。
 これまで散々苦痛を強いてきた空間から脱出できるのだ。それを考えれば痛みなど二の次。生きている証にさ
えなる。
 一歩。
 また一歩とドアに近づき、彼女は後は目の前の障害を開くだけで自由を手に入れる事ができる場所に立った。
 気を落ち着かせているのだろう。
 瞳を閉じ、胸に手を当てて何度も深呼吸をしている。
 期待に満ちた眼差しでしっかりとドアノブを見つめると、ゆっくりと手をかけた。
 さぁ。
 望んだ世界へと体を踊らせよう。
 何処までも澄み切った青い空に、髪を梳く心地よい風を全身に浴び、胸の内に溜まった思いを高らかに歌い上
げると良い。
 彼女がかつて歌っていた『蒼い鳥』という曲のように、ただ何もないその世界に己の翼だけで飛び立つんだ――。

「尤も、そんな姿を見た後で、叩き落すのが心地よいんだけどね」

 俺が呟いた瞬間、彼女はモニターの中で真っ赤な蛋白質の塊となった。


 
                                                  END


<after>

「如何でしたか?」
 モニタールームから社長室に行くと、そこには顎の下で手を組んだ高木社長が満足そうな笑みを浮かべて待っていた。
「うむ。あそこまで辿りつくとは驚いたが、株主様達の反応は上々だった。ご苦労だったなプロデューサー君」
「いえいえ。ご満足頂けたなら何よりです。しかし……」
「何だね?」
「あの頑丈さなら、何処かの医薬会社に売れば、良い献体になったと思いましてね」
 ふっと浮かんだ考えだったが、あの調子であれば内臓系を弄繰り回しても生きながらえていたかもしれない。
「ああ、確かにな。その方が世界のためにもなったな」
 社長も同意を示し心痛な表情を浮かべて頷いた。
「ええ。ただ満足するだけではなくて、その後の人々のためにも役立ちますから」
「しかし最初に企画を聞いた時はどうしたもんかと思ったが、こういう需要はあるのだな」
 そう。
 最初にこういう企画を持ち込んだのは俺だ。当時はまだ駆け出しのボンボンで、枕営業を基点に仕事を取る以外に営業手法を何も持ち合わせていなかった。
 だがある日ふと気づいたのだ。
 業界人の中には『色』だけではなく『鉄』を望む人種が多い事に。
 気づいたら後は簡単だった。枕営業で有名になっていた担当アイドルを地下に監禁し、美しさを保たせながら後に続くアイドルのために体を張って営業させる。そしてある程度の年齢に達し、『色』を保てなくなる時期にきたら今度は脱出サスペンス風味の賭博レースのお馬さんに早代わりだ。
 何も知らないアイドルの前にわざと脱出方法を提示し、逃げ出した彼女達を暗視カメラで撮影する。
 そして別室にいる株主やディレクターにその姿を娯楽として提供する。
 もちろんそれはアイドルを自由にしてしまう危険性もあるのだが、彼女達の服には光に反応する小型爆弾がボタンの数だけ付けてある。
 この提供が本当に上手く機能した。
 今では業界の八割は顧客といって差し支えない。
「もちろん。人間の性は所詮血と暴力。最初にアイドルとして世間に貢献させ、ある程度育ったら今度は番組関係者やスポンサーの皆々様に役立つように地下のアイドルとして活動させる。ご希望があれば今回のような脱出劇を模したサ
スペンス。エンターテイナーは最後の最後まで楽しませなければなりませんから」
「それがアイドル、か」
「はい」
 アイドル――偶像の彼女達はその短い一生のために自らを磨く。だったら最後まで美しさを使い切ってあげなければ嘘というものだろう。それができなければプロデューサー失格だ。
「ああ、そうだ。最後のあれは良かったな。ばぁんと花が開いたように爆発して綺麗だったよ」
 ふと社長は先程のゲームを思い出したようで、少女の散り際を口にした。
 実はあれは俺も満足だった。
 まさかあそこまで希望という名の果実が美しさに磨きをかけてくれるとは思いもしなかった。本当に脱出されてしまう危険性もあるのでそうそう使える手ではないが、時間を調整して日中に必ず脱出できるよう手配できれば面白い見世物になるだろう。
「ありがとうございます」
 頭の中で新しいプロデュースを考えながら、社長にお礼の言葉を述べた。
 と、そこに第三者が近づいてくる足音が聞こえた。
「プロデューサーさん」
 それは同じく765プロに勤務する事務員・音無小鳥さんだった。
「はい? ああ、小鳥さん」
「これが次のプロデュースする女の子です」
 一枚の書類を差し出された。
 俺は目礼してから書類を受け取ると、その内容を見てさすがに目を見開いた。
「……ふぅん。水瀬グループのお嬢様ですか。いいんですか? 社長」
「ああ。彼女の父親から身内がどんな美しい姿を晒すか見てみたいと申し出があってね。是非君の手で大輪の花を咲かせてあげてくれたまえ」
 何とも世も末だ。
 だが俺の仕事はプロデュース。クライアントからのご希望とあれば答えないわけにはいかない。
 一度だけ社長を見る。
 彼は大きく頷いてくれた。
 明確なGOサイン。
 俺は社長に踵を返すと部屋を辞退した。

 さて始めるか。
 新しいプロデュースを――。

嫌いな雨

2010-04-01
SS
 雨は嫌い。
 落ちてくる雨粒を眺めていると気が滅入ってくる。
 シトシトシトシト……。
 昔の人はこの音が風流とかって色々と名言を残しているみたいだけど、私にはただ重苦しいだけのものだ。
 空を見上げる。
 限りなく白に近いくせに、まるで止む気配のない静かな雨は、仕事が終わって午後から二ヶ月ぶりの半休に
なった私を、煉瓦調の雑居ビルに入っている雑貨屋さんの軒下に釘付けにしていた。
 
「天気予報だと雨は夜からだって言ってたのになぁ」

 最初は雑貨屋さんの中を覗いて時間を潰していたけど、三十分を過ぎたあたりでお店の人に申し訳なくなって
表に出た。
 出たのは良いけど結局はその場から立ち去れていなかった。
 だって雨は嫌いだから……。

「傘、ないのか?」

 その時お店の中から声が聞こえた。
 振り返ると、さっき覗いた時にはいなかった大学生くらいの男の店員さんいた。
 休憩でもしてたんだろうか。どこか眠そうな瞳を擦りながら私を見ていた。

「夜からだって言ってたから、持ってこなかったんです」

「駅、走れば三分もかからないだろ?」

「濡れたくないんです。雨嫌いですから」

 少し冷たかっただろうか?
 でも雨のせいで気分の悪い私には精一杯の優しい対応だ。罪悪感はちょっぴりあるけれど、謝る言葉は口を突
きそうもない。
 私は心の中で不機嫌そうに頭を下げると、再び空を見上げた。
 ……もうすぐ止みそうなのに。
 遠くを見ると雲の間に切れ間が見える。
 多分、十五分もしない内に、ここも晴れる筈だ。

 ようやく開放される――。

 そんな思いが重々しく私の口から溜息になって零れた。
 その時、不意に私の頬に冷たい物が触れた。

「ひゃい!?」

 驚いてその場で五十センチは飛び跳ねた。
 そして着地と同時に冷たい物が触れていた頬を手で押さえて、そんな事をした犯人であろう人物に指を突きつ
けた。

「な、な、な、な、何するんですか!」

「暇なんだろ? ちょっと付き合えよ」

 私の質問は一切スルーして、店員さんは手に持っていた缶コーヒーを私に投げて寄こした。

「っとっとっと……」

「ほら、この椅子使っていいぞ」

 続けて店員さんは折畳み式の丸椅子を私に突き出す。
 ……一体なんだというんだろ?
 いきなり缶コーヒーを頬に当ててきたり、話に付き合えーとか言ったり。
 誰もわかりました。なんて答えてもいないんだよ?
 雨のせいもあって感情が抑えられない私の顔は、アイドルに有るまじきすごい膨れっ面をしていると思う。
 でもそんな私の反応なんてどこ吹く風。
 店員さんはさっさと椅子を開いてどっかりと座ると自分の分の缶コーヒーの蓋を開けると、大きく一口を飲ん
でいる。

「…………」

「ん? 何だ?」

「それはこっちの台詞ですよ! 何ですかいきなりこんな……!」

「雨降って濡れたくないんだろ? だったら暇潰しに話くらいってだけだろ?」

「傘を貸してくれてもいいじゃないですか!」

「生憎俺と入れ替わりに休憩に入ったじーさんが使ってて一本もないんでね」

 ……私怒ってもいいよね?
 
「ちょっと、自分かっ……」

「コーヒー、温くなっちまうぞ?」

 途中まで開いた口がパクパクと動くけど、声にならない。
 怒りの矛先を向けようとした途端にスルーされた私の感情は、今まで以上に行き先を失ってぐるぐる回ってし
まった。
 もう仕方ないんだから!
 タダでくれるって言うなら、もらっちゃうんだからね。もう返せって言ったって返さないんだから!
 怒りを缶コーヒーにぶつけて、今までにない大きさの音を立てて蓋が開く。そしてそのまま一息に全て飲み干
した。
 口の中が缶コーヒーの甘すぎる味に支配される。
 
「おー。凄い凄い」

 何か関心する琴線に触れたのか、目を少し開いて小さく拍手を送ってくる彼を無視して、椅子を広げて私も座っ
た。
 もちろん、店員さんには背中を向けて、だ。

「それでお話って何を話すんですか!? 聞くだけ聞きますから勝手に話せばいいんじゃないですか!?」

「お前さー」

「何です!?」

「何で雨嫌いなの?」

 ピタリと。
 まるで歯車の回転が止まるように私の全てが止まった気がした。

「……嫌いなものは嫌いなんです。どうだっていいじゃないですか」

「そうか?」

 店員さんは胸ポケットから煙草を取り出すと、まるで彼がするように、トントンと取り口付近を叩いて中身を取り出した。
 その仕草に、ムネがギシリと軋んだ。

「俺は雨は好きだけどな」

「そうですか。私は嫌いです」

 そう。
 雨は嫌いだ。
 あんな思いをして告白をして、それでも去っていったあの人を思い出すから。
 ラストコンサートが終わった。
 二人で歩く道。
 そして。
 そして……。

『春香――』

 思い出した光景に、私は思いっきり目を閉じた。
 雨音だけが耳朶を叩く。
 嫌い。
 嫌い……。
 嫌い……!
 雨なんて大っ嫌い!
 
「雨なんて……」

「雨が嫌いな奴ってな」

 また店員さんは私の言葉を遮った。
 ゆっくりと瞳を開いて隣を見ると、店員さんはさっきまでの私と同じく雨が降る空を見上げていた。
 ただ、その瞳に映る感情は何処か寂しげだった。

「雨が嫌いな奴ってな、泣いてる奴なんだ」

「泣いてる……?」

「それが何のせいで泣いてるかは知らないが、自分の中にあるナニカを流せていないんだ」

 ナニカってナニ?
 そんな事自分に問いかけなくてもわかっている。
 私が雨を嫌いになった理由なんて一つしかないのだから。

「……ナニカを流せれば、雨は好きになるんですか?」

「さぁ。どうだろな」

 店員さんはゆっくりと立ち上がると、煙草を口から離した。

「ただ、ナニカにかけた思いだけは……時間が経ったら経った分だけ重くて重くてどうしようもなくなるんだ」

 ズキリ。
 軋んでいた胸が痛んだ。

 笑顔で帰った。
 あの人も笑顔で別れてくれた。
 でも家に着く頃に降り出した雨は、私を一瞬でずぶ濡れにした。
 私の頬を伝うとそれはただの水から涙に代わった。
 いつしか私は歩みを止め、空に向かって泣いていた。

 そう。
 泣いていたんだ――。
 
「おい、大丈夫か?」

 店員さんが少し慌てた様な声をかけてくる。

「え?」

「泣いてるぞ?」

 言われてそっと頬に触れると、そこには涙の感触があった。
 それは止め処なく流れ、私の頬を濡らしていく。

 ああ、そうか――。

 止まらない涙を拭いながら、私はわかった気がした。

 私は……今でもこんなにあの人が好きで……好きで好きでたまらないから……雨が嫌いになったんだ――。

「雨、上がったか……」

 何も言わずただ私を見守ってくれていた店員さんが、雲の隙間から差し込むスポットライトのような日差しに
目を細めた。
 私も顔を上げる。
 すぐに飛び込んできた光に、思わず手で影を作った。

「嫌いな雨、止んでよかったな」

 煙草を消しながら、店員さんは静かに微笑む。
 私も釣られて微笑んだ。

「いえ、私、雨は嫌いじゃないですよ」

「……そうか」

「はい」

 元気良く頷いて、私は立ち上がった。

「コーヒー、ご馳走様でした」

「ん? 気にするな」

 中身のない缶を私の手から取り、くるりと背を向ける。
 その大きな背中に、あの時の寂しい理由が乗っていると思うと、取り払ってあげたいと思う。
 だけど、その手助けをしちゃいけないんだと思った。

「また……ここに来てもいいですか?」

 だってそれは……。

「……雨が降ったらな」

 彼が頑張って背負い続けると決意したものだと思うから。
 だから私は頑張ろうと思う。
 貴方の言葉で雨が好きになりましたよって。
 だから貴方も頑張ってくださいねって報告しに。

「それじゃ、また来ますね!」

                                                   END


<after>
 何処かで見覚えのある少女を見送り、椅子をしまってようやくカウンターの前に腰を落ち着けた時、携帯が震
えた。

「はい? 何だ兄貴か。ああ。こっちは大丈夫。元気にしてるよ」

 相手は今は海外で働いている兄貴だった。
 ちょっとした世間話と近況報告を互いに話し終えたところで、あの少女の姿が頭を掠めた。

「そういえばさ、さっき雨が嫌いだっていう女の子に会ったよ。え? 違う。ナンパなんてするか。うちの店の
前で雨宿りしてたんだよ。

 ……そうだな。
 うん、何かさ、彼女を亡くした時の俺そっくりでさ、見てられなかったっつーか。

 あん?
 そんなんじゃないって。
 だってあの娘にゃ多分惚れた男いるからな。

 だから別にそういうつもりじゃないって!
 そんな事ばかりいうんだったらもう切るぞ?
 あーうっせいうっせい!」

 電話口の向こうで兄貴が何か喚いているが、一切関知せず電話を切った。ついでに電源も落としておく。これ
で何かあっても電話には出なくて済むだろう。
 ほっと安心して、俺はラジオの電源をつけた。
 すると、最近いいなと思っていた女性歌手の歌が流れていた。
 しばしの間耳を傾ける。
 いつもこの曲を聞いた時は買おうと心に決めるんだが、歌手の名前を聞き忘れてしまう。TVでも見れば一発なん
だろうが、ほとんど見ないから何処のチャンネルを見ればいいのか検討もつかない。
 だから今日はしっかりと名前と曲名を聞こうと心に決め、パーソナリティが読み上げるのを待った。

 だがこういう時に限って客は来るもんだ。

 ドアベルが鳴ったのにがっくりして、俺はカウンターを離れる事にした。

 そしてその直後、ラジオから曲名が流れた。

『――お送りしました曲は、天海春香でshiny smileでした』
 

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